2017 / 10
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シャルル・アズナブールの歌にも「ラ・ボエーム」があって、大好きなのだが、この主人公も画家である。ところでオペラや歌に出てくる画家は必ず貧乏であって、リッチな画家の例を知らない。どこの国でも画家=貧乏という図式が定着してしまい、貧乏画家という熟語だって一般的だ。

ところで英語で画家はペインター、フランス語ではパントルといってペンキを塗る人、つまりペンキ屋ということで、ただパントルといったのでは画家かペンキ屋か区別が付かない。イタリア語では画家はピットーレで地域によってはペンキ屋でもあるが、別にヴェルニキアトーレという、ペンキやニスを塗る人、つまりペンキ屋という単語もあるようだ。

どうして単語が一つしかないかはオペラを見て分かった。多分「ラ・ボエーム」だったと思うが、画家がアルバイトで町の店の看板絵を描く場面があって、キャンバスに向かっているだけではパンが買えないので、看板の仕事をするのは一般的だったからペンキ屋も画家も同じということになったのだろう。

日本では町のペンキ屋の腕の見せ所は銭湯の看板だっただろう。なんといっても海と富士山が定番だったと思うが男湯と女湯では絵が違ったのだろうか?
看板絵もほとんどなくなってきて、今は広告代理店にでもなっているのだろうか。

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話が逸れたがアズナブールの「ラ・ボエーム」は画学生だった男が20年後に、かつて住んでいたモンマルトルのアトリエ、と言っても小さな屋根裏部屋だったかもしれないが、を訪れ懐かしむという内容だが、学生時代をパリで過ごしたカザンにとってはオーバーラップするものがたくさんあり、ジーンと来てしまう。

リラが窓辺まで届いて咲いていたアトリエは僕たちの愛の巣。夜が明けるのも気が付かないほど熱中して彼女のヌードをデッサンし、何度も乳房や腰の曲線を描き直し、充実した疲れの果てに二人で夜明けのカフェオレを飲む。
暖房の石炭を買う金のないときは火の気のない部屋を出てカフェに仲間と集い、ストーブを囲んで熱く語り合い、詩を朗唱したりして冬が過ぎるのをじっと待った。そしてあの頃は誰もが自分の才能を信じ、未来の栄光を夢見ていた。
いつも餓えを叫び、一日一回しか食事を取らず、たまにビストロで食事をするときは1人分の料理を二人で分け合って食べたが、若かったから、それも楽しい思い出、青春は美しくもあり、おろかでもあった。
偶然以前住んでいたところを通りがかったが町の様子は悲しげで、すっかり変わってしまい、階段を登ったところにあったアトリエはなくなって別の人が住み、リラの木は枯れていた。


大体こういう内容だがカルチェラタンあたりのカフェの情景が脳裏に浮かび、青春はおろかであったという言葉にひどく納得してしまう。最も今だにおろかさは持ち合わせているので、心は青春謳歌?

前にも書いたがこの内容を日本語に訳詩すると相当削らなくてはならなくなる。なかにし礼の訳詩が一般的だが大体シャンソンになるときれいな言葉が並ぶことになっている。

だからヌードとか裸婦という言葉は使われないのだが、彼女のヌードを描くと言うのはとても大事な要素だと思う。一つにはお金がないからプロのモデルは雇えないということを暗示し、彼女を愛しているからありのままの彼女を描きたく、また彼女も彼のそういう気持ちに応えたいという愛の表れでもあるし、若い女性の飾りを取った、けな気な裸体の美しさが絵のようでもあり、冷えた体を温め、休みなく絵筆を取り続けた疲れを癒す、熱い一杯のカフェオレが体にも心にも沁み入るのだが、日本語で「彼女をモデルに絵を描く」では誰もヌードだと想像しないし、着衣だったら貧しさも、青春の美しさも、カフェオレの効果も半減すると思うのです。

だがいざ自分で訳してみるとなかなか歌の中に裸とか乳房いう言葉は入れにくい。ヨーロッパでは女性の裸体は美の女神であるヴィーナスそのものだし、古今の絵や彫刻に表現され続け、誰もが見慣れていて、憧れに通じるものがあるように思うが、日本ではむしろ隠す方向に向いているから何となく言葉が露骨に感じてしまうのだろう。

ところで画学生だった男の20年後はどういう職業なのかは歌詞の中には書かれていない。きっと彼女とは別の人と結婚し、平凡な家庭を持ったサラリーマンでしょう。

「セ・ラ・ヴィ」・・・・人生とはそんなものです。

アズナブールの「ラ・ボエーム」 

アズナブールの「ラ・ボエーム」LIVE



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Kazan

Author:Kazan

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宇藤華山(カザン)
東京芸術大学及び同大学院卒業 フランス政府留学生としてパリ高等美術学校で学ぶ。シャンソン歌詞の翻訳をしながらシャンソンを歌う。

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